創業時に、足りない設備投資の資金などを借り入れる場合、住所要件に注意したほうがいいです。この住所要件を満たせなくて、借入をあきらめるという声が少なからずあります。
ただ、今後、少しずつ変わっていく可能性もゼロではありません。借り入れの申請をする前に各所に確認するのがいいでしょう。(2022年3月現在)
創業時はどうしても資金的に厳しいケースが多いですし、個人事業から始めることもありますから、自宅の住所を晒したくないということもあります。そんな時便利なのはバーチャルオフィスですね。
バーチャルオフィスにもいくつかパターンがあるかと思います。
などがあろうかと存じます。このうち、下から二つ目はぎりぎりセーフ。一番下はほぼOKです。上の二つは占有エリアがないので、恐らく不可の可能性が高いです。
バーチャルオフィスやシェアオフィスは安いがゆえに気軽に契約して、気楽に解約できるというメリットはあります。が、創業時に借り入れを起こす際には、そこが逆にデメリットにもなり得ます。契約期間は次のようなパターンがあるかと思われます。
これらの契約期間のうち、年単位はぎりぎりセーフの可能性あり(一年だと不可と言われた例あり)。月単位程度ではだめなケースが多いです。
お金を貸す側(保証する側)からすると、お金を貸した後、ドロンと消えられては困るわけです。その意味では、その会社、または個人がその場所に「定着しているかどうか」が大切なわけです。
たとえば、きちんと事務所を借りて、保証金を支払い、3年単位で契約更新ということであれば、少なくとも3年はそこにいると想像できます。また、保証金が足かせになって、簡単には動かないだろうとも予想できます。
一方、バーチャルオフィス、シェアオフィスだと、簡単に解約して消えてしまう可能性が否定できません。ましてや、占有エリアを持たないとなると、そもそもその場所に意味があるのか?ということになりかねません。結果、お金を貸す側からすると、「定着の信用度がない」ということになりますから、お金を貸しにくくなりますね。
自宅や居住場所を事務所として使ったりする場合も、創業時は特に注意が必要です。
大体、次の4つのパターンがあるかと思います。
これ以外に、普通に賃貸ビルなどを事務所として借りるケースは問題ありませんので、ここでは説明しません。
ポイントは「契約上、問題がないかどうか」ということにつきます。
創業時は小さく始めようということで、自宅(不動産保有)を事務所としたり、店舗としたりして開業することがあります。これは多くの場合は問題ありません。問題になるケースは次のような時です。
以上、二点については気をつけたほうがいいかと存じます。
個人ではなく、株式会社などを自宅で登記する場合も、上述の個人事業で自宅を事務所とする場合と同様の形態が考えられます。
マンションなどでは組合の規定で法人登記不可ということもあり得ます。また、「居住用」と特定されてしまっているマンションもありますから、その場合は事務所使用は必然的に不可ということになります。
もうひとつの注意点は、「契約」です。法人と自宅を持っている自分自身が「賃貸借契約書」を結んでおく必要があります。
居住している賃貸物件の場合はどうでしょうか。
バーチャルオフィスなどの時に問題になった「定着性」というところには問題が少なそうです。住む場所をコロコロ変える人は逃げ回っている犯罪者ぐらいでしょうからね。
一方で、問題になるのは、「居住用」かどうかです。
賃貸契約書をよく見てください。「用途」という欄(または目的など近い項目)がありますので、そこを見てください。そこに「居住用」と書いてあると、事務所使用は不可です。
ただし、不動産業者(管理を大家さんから任されている)や大家さん自体が、「事務所使用OK」と一筆もらえるのであれば、これもクリアできます。「覚書」のような形で、きちんと捺印されている必要はあるかもしれません。口頭ベースでOKもらってますというのでは、証明にはなりません。
個人事業で居住している賃貸物件を事務所とする場合とほぼ同じと考えてください。
大家さんなどによっては、居住用に貸しているところに法人登記されては困る、という方もいらっしゃいます。
ちなみにそうでない大家さんもいっぱいおられます。これは大家さんや不動産業者さんと借りている人との信頼関係に大きく依存するのではないかと感じます。
市区町村の制度融資では、法人の場合、その多くが「本店登記地がその市区町村内にあること」を住所要件として課しています。法人地方税がきちんとその市区町村に落ちるようにするためです。
このため、法人の登記地と実際、仕事をしている場所(飲食店や小売店なら営業場所)などが違う場合には問題が発生することがあります。
たとえば、法人登記地を自宅(不動産所有)とし、実事務所が同じ市区町村内にある場合は特に問題になりません。納税地が同じエリアになる可能性が高いですし、登記地・事務所、どちらも同じ市区町村ですから、市区町村の制度融資を使う場合、同じ役所に出向くことになるからです。
が、法人登記地が渋谷区で、実事務所が新宿区という場合は厄介になります。それぞれの市区町村の判断になりますが、渋谷区に申請に出向くと「実事務所は新宿区なら、そっちで申請してくれ」と言われ、新宿区に行くと「登記地が新宿区内ではないから駄目だ」と言われる場合があるのです。
できれば、法人登記地と実事務所が同じ市区町村内にあるのがよいでしょう。ただ、上述の「市区町村は違うが同じ都道府県内にある」という時は、都道府県が設定している制度融資を使うことは可能である場合があります。
これが最も厄介です。法人登記地が東京都渋谷区で、実事務所が千葉県市川市にあるといった場合です。
この時は、上記の同じ都道府県で違う市区町村にある場合と同じように、東京都渋谷区の制度融資も千葉県市川市の制度融資も使えないということが起こり得ます。さらに、都道府県が違いますので、東京都の融資制度も千葉県の融資制度も使えないという可能性も出てきます。
この事例は比較的珍しい場合なので、あまり起こらないとは思いますが、気をつけてもらいたいです。
創業したての時には、事務所を安く借りられれば、その分、固定費が減らせますから身軽になります。
そのため、先に創業して安定している友人・知人が借りている事務所を又貸ししてもらうという場合があります。
一角を借りるということですね。
この場合で、気をつけるのは次の点です。
これらがクリアできないと、住所要件として認められない場合があるので、注意しましょう。
最後に、住所要件で大事なことをまとめておきます。
以上のようなことをしっかりと意識して、住所要件をクリアしましょう。