自社事業の現状認識


やみくもに何か新しいことを始めようとしても、うまく行く確率は上がらないでしょう。かといって、考える時間が長すぎれば、市場調査などに時間をかければかけるほど、事業を始めるのが遅くなったりもします。

 

また、新しい事業をはじめるにしても、まずは足下をしっかりと見据えることは大切です。もしかしたら、足下を見据えたら、現事業でやるべきことが見えてきたりすることもあります。それはそれで良いことです。

 

まず、自社の事業の位置づけをあるフォーマットで分析してみましょう。

 


自社事業を知る

図にあるフォーマットに自社事業を丸で書き込んでみましょう。

(もし、事業は1つしかないよ、というときは顧客ごととか、商品カテゴリごとに丸を書いても構いません)

 

横軸は、自社事業がどのくらい外部から認知されているかです。左に寄るほど知られていると考えてください。もう永年やっている事業ということであれば、少なくとも既存顧客には浸透しているでしょうから、左の方に位置づけます。はじめたばかりの事業なら右寄りです。

 

縦軸は、自社事業が属している業界についてどのくらいノウハウやスキル、知識、経験などがあるかを示します。上に行くほど、経験値が高いと考えます。自社のメイン事業は通常、上の方にあるはずです。はじめたばかりでまだ業界知識にも乏しいなら、下の方です。

 

そして、丸を書き込むときには、その大きさに気を付けてください。相対的で構わないのですが、大きい丸なら売上や利益が大きい事業。小さい丸なら売上や利益が小さい事業と表現します。さあ、どんな図が出来上がりましたか?

 

ちょっと例を見てもらいながら、もう少し深く説明してみましょう。

図を見ながら、読み進めてください。

 

まず、メイン事業は丸の大きさが大きく、また左上の方に位置づけられていますので、これはこの会社にとっては重要な事業となります。

 

続いて、サブ事業はまだ、市場からの認知度がいまいちで、かつノウハウはある程度はあるものの、これからさらに獲得する必要がありそうな事業です。丸の大きさは必然的にメイン事業よりは小さくなります。

 

そして、新事業は立ち上がって間もないケースです。顧客にはまだまだ知られておらず、はじめたばかりなので経験値がありません。当然、売上などはまだまだ上がっていない状態です。

 

こんな感じで、今自社が進めている事業を書き込んでみると、どの事業がどのような位置づけかというのを目に見えるようにできます。事業ではなく、顧客や商品カテゴリで書き込んでも同じようになります。

 

サブ事業や新事業をどのように育てるかということも考えたいところですが、まずはメイン事業について考えておきましょう。

 


メイン事業が縮小するリスクを考える

さて、事業が一つしかないと、これが縮小すると会社としてはとてもピンチになります。そのピンチになる可能性について考えてみましょう。

実はその多くは、外部環境の変化によるものだったりします(つまり、コントロール不可能な場合が多い)。

 

1の矢印が示すのは、市場の縮小です。市場が相対的に小さくなったり、顧客自体からの発注量全体が減ったりするということです。よくある話です。

 

2の矢印が示すのは、相対的な認知度の低下です。営業もせず放置していたり、競合他社が認知度を上げたりしてくると、相対的に認知度が下がります。認知度が下がれば、丸の大きさ、つまり売上や利益は下がります。

 

3の矢印が示すのは、ノウハウの陳腐化です。新しい技術が開発されたり、これまでとは違う売り方が出てきたりすると、自社内のノウハウが使えなくなったり、経験値が相対的に下がったりするわけです。2と同様、丸の大きさは小さくなります。

 

こうしたリスクを漠然とは認識していても、対策を取っていないというケースはあります。もちろん、このメイン事業を立て直すという必要性もありますから、ここをおろそかにしたままで新規事業を立ち上げようなどというのは愚かでもあります。

 

ただ、メイン事業が安泰なうちに、別の事業を立ち上げておいて、育てるという必要性はメイン事業がピンチになってからでは遅いのです。

 

続いて、新事業・多角化事業をどう選ぶかを考えてみましょう。