なぜ、中小・小規模事業者に新事業が必要か

昨今、政府の肝いりで「事業再構築」という言葉がいろいろなところで聞かれます。これは、コロナ禍で厳しい経営環境に置かれた小規模、零細事業者に対して補助金が設定されたこともあるでしょう。

一方、新事業とか、多角化とかいう言葉を聞くと、どうしても「大手企業」の話のように聞こえます。が、しかし、事業再構築という言葉を私は、ほぼ新事業開発、多角化と同じ意味だと考えています。そして、実際、本当に事業再構築、新事業が必要なのは中小・小規模事業者なのではないかと私は考えています。

なぜ、私がそう考えているか、少しだけ書いておこうと思います。

 

会社を安定させるため

事業再構築、新事業開発が必要な最大の理由は、「会社を安定させるため」です。

ちょっと例を挙げてみましょう。

 

残念ですが、最近は本が売れない時代です。もし、本屋さんが本だけに特化して仕事を続けていると、厳しい時代です。実際、本屋さんは大幅に減少し、ネット書店や大手の書店のみが残っている状態です。

本屋さんが本だけを売っていたら、早晩、つぶれてしまう時代になったわけです。

 

もし、本屋さんが今どきの方向性を出して、カフェを併設したらどうなるでしょうか。

カフェに来るだけの人ももちろんいるでしょうが、カフェと本は比較的組み合わせが良い事業ですから、お互いに相乗効果が出て、売上を補完しあうでしょう。

 

お店が安定します。

 

もちろん、そこにはリスクも存在します。たとえば、カフェを作るようなお金がなかったり、場所が十分に広くなかったり、コーヒーに関する知識が無かったり、食中毒を出してしまう危険があったりもするでしょう。

 

ですが、カフェをやらなければ、「座して死を待つ」だけでしょうから、そのリスクの方が大きいようにも思います。

 

リスク分散するため

事業を複数持つ、つまり多角化することは、リスク分散につながります。ある業界が市場の縮小や突発的な事故などで萎んでしまっても、多角化していれば、他の事業が補完してくれる可能性が残ります。

売上減少が100%になってしまうことは、かなりの確率で減少します。

 

市場縮小に対応するため

上述の本屋さんの場合は、まさに本の市場の縮小に耐え切れなくなって閉店するということにつながるわけです。

本以外の事業を早めに始めておくことで、その本の市場縮小に負けない体質を作ることは不可能ではありません。

 

後継者を育成するため

既存事業を運営している現世代の後継者は、同じ事業をしたがるでしょうか?仮に、引き継ぐとしても経営能力はすぐにつくものではありません。

そういう後継者に小さくても新しい事業を運営させることによって、経営能力を磨き、将来的に事業全体を引き継いでもらうというのは、悪い考えではないでしょう。

 

売上を引き上げるため

事業を複数やれば、単純に考えてみると売上が引きあがるはずです。もちろん、すぐに2倍になるわけではないでしょうが、たとえば、20%増しくらいには、頑張って引き上げられるでしょう。

 

ましてや、既存事業が先細りなのであれば、早めに新しい事業を始めることで、先細りになる既存事業を埋め合わせることもできるかもしれません。

 

中小・小規模事業者の場合には、人手が少ない傾向に当然ありますから、うまく効率化して進める必要はあります。

小さくはじめて育てる

売上を一気に2倍にするというのはなかなか、難しいでしょう。しかし、小さくはじめて育てるという気概でやれば、おのずと数字はついてくるものです。

将来の柱を今から、苗木から育て、いずれ大きな木にして行きましょう。

 

どうやるかの前になぜやるか

新事業が必要な理由を一般論で上述しましたが、実際にはこうした理由の他に、「この会社でこれをなぜやるか」ということが決められていないといけないものです。

人はどうしても、方法論に傾きがちです。が、ピンチになったとき、この「なぜ」が効いてきます。その理由に自分自身が納得していればしているほど、ピンチを乗り越える気概が生まれます。

 

上述の「会社を安定させる」とか、「売上を引き上げる」というのもひとつの「理由」ですが、もう一堀、奥にある新事業をやる理由をぜひ、考えてみてください。

 

そして、純粋に楽しいですよ

新しいことを進めるのは、今の事業がきつくなってからでは遅いですよ。安定時から手をつけましょう。

新しいことを進めるのは、少しずつリスクを取って大きくしていきましょう。身の丈に合わせてやろう。

新しいことを進めるのは、時にきついこともあります。が、それも後には良い思い出になったりします。

新しいことを進めるのは、純粋に楽しいことですよ。いや、逆に楽しいことを選んで多角化しましょう。

 

一応、外部環境も見てみましょうか

※以下の記述は、2023年1月現在のものです。

コロナによる環境の大きな変化

コロナによって社会環境は大きく変わりました。元に戻るだろうと思われるところと、そうでないところがあることはご理解いただけると思います。

 

中小企業白書の2021年版によると、コロナ感染症が終息した後もネットショッピングや家での運動、モバイル決裁などは4割以上の人が継続して使いたいと答えています。

 

戻らない部分も多分にあるということです。この変化を意識して多角化、事業再構築を進めることは、中小企業・小規模企業だとしても継続するためには必要なことではありませんか。

 

テレワークの定着

コロナになって、就業環境も変わりましたね。業種業態によって、できない業種もありますが、2020年末現在でさえ、2割の企業でテレワークになっています。「大企業の話でしょ?」という方もいらっしゃるかもしれませんが、当方の顧問先でもIT関連事業者は完全テレワークのところもあります。

 

テレワークは今後、当たり前になっていく可能性があります。この就業環境の中で、今の事業が続けられるのかどうか、続けられるとしたらどういう形か、続けられないとしたらテレワークとどう折り合いをつけるかなど、考えていく必要がありますね。

 

続いて、自社事業の現状認識を深めてみましょう。